唾液腺多形腺腫と唾液腺悪性腫瘍の遺伝子変異(p53癌抑制遺伝子、c-erbB-2癌遺伝子)を免疫染色法ならびにPCR法とin situハイブリダイゼーション法を使用し検索した。 方法 1.まず唾液腺多形腺腫と唾液腺悪性腫瘍をp53モノクロナール抗体とc-erbB-2モノクロナール抗体を使用し免疫染色した。2、1、と同様の組織についてp53癌抑制遺伝子とc-erbB-2癌遺伝子変異をPCR法を用いて検出した(p53はエクソン5から9のプライマーを使用)。3、1、と同様の組織をin situハイブリダイゼーション法を使用しp53癌抑制遺伝子とc-erbB-2癌遺伝子発現を見た。 結果 1、多形腺腫はp53モノクロナール抗体とc-erbB-2モノクロナール抗体で染色されなかったが、悪性腫瘍には両抗体で染色されるものが見られた。特に多形腺腫内癌が両抗体で強く染色され、多形腺腫内癌の多形腺腫部分にもc-erbB-2モノクロナール抗体で染色されるものが見られた。2、PCR法でp53癌抑制遺伝子とc-erbB-2癌遺伝子変異が唾液腺悪性腫瘍に見られたが、多形腺腫にはp53癌抑制遺伝子とc-erbB-2癌遺伝子変異は見られなかった。3、唾液腺悪性腫瘍はp53癌抑制遺伝子とc-erbB-2癌遺伝子プローブを使用したin situハイブリダイゼーション法で強く染色されたが、多形腺腫は染色されなかった。 この結果より唾液腺悪性腫瘍の発生にp53癌抑制遺伝子とc-erbB-2癌遺伝子の関与が考えられたが、多形腺腫の発生に関与する遺伝子変異は検出されなかった。
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