研究概要 |
ラットの角膜内皮とリンパ球の共培養実験系はすでに確立されているが、その免疫遺伝学的手法の応用に限界があった。そこで今回の研究においては、マウスあるいはヒトからの角膜内皮の培養実験系を確立することを第一の課題とした。特殊なサイトカインや因子、遺伝子を使わずにマウス角膜内皮の培養をする事は困難であったが、ヒトにおいて,Extra-cellular matrix(今回はラットテイルコラーゲン)を既にコーテイングしてある培養器の使用により、実験に共せうる内皮の細胞株を得ることに成功した。こうして得た角膜内皮とともに、ヒト末梢リンパ球を短期/長期に共培養し、ラットの角膜内皮実験系にて既知の現象、即ち生存率と増殖反応能に及ぼす影響をまず解析してみた。その結果、ヒトの角膜内皮もラットのそれと同様に、リンパ球の生存率保持機能をもっていることがわかった。即ち、角膜内皮のない培養系においてはヒトリンパ球は2週目にはほぼ死滅するが、角膜内皮との共培養系では、およそ半数が生存していた。さらに、単に生存しているのみでなく、Alamar Blueによる細胞活性検査でも、はるかに代謝が活発であることもわかった。さらに、コンカナバリン等による増殖反応の誘導は抑制するという、ラットの内皮と同様に、「両刃の剣」的なリンパ球制御活性を示していることが判明した。以上のことは即、臨床においてヒト眼球内の前房(角膜内皮と虹彩にて囲まれた腔)内でおこっていることを反映していると考えられるので、今後このシステムを実験系として、上記の機能の説明因子解明、あるいはその臨床応用の可能性について、次年度において検討してゆく計画である。
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