Porphyromonas gingivalisからトランスポゾン変異導入により分離した黒色色素非産生性変異株について解析を行った結果、すでに同様な方法で分離したporR遺伝子とは異なるDNA領域に挿入変異をもつ変異株を分離した。この変異遺伝子(porT)をクローニングし、この領域に部位特異的変異導入を行って、新たにporT変異株を作製したところ、porT::Tn4351変異と同様に黒色色素非産生性を示した。このことから、porT遺伝子はporRとともにP.gingivalisの黒色色素産生性に関与していることがわかった。また、この変異株は色素非産生性のほか、菌体外プロテアーゼの産生や赤血球凝集能も減少していることからこれらの性状にも関与していることがわかった。これらの性状はporR変異株でもみられることから、両遺伝子は同一のシステムに属する遺伝子である可能性が示唆された。porT遺伝子の塩基配列を決定したところ、244アミノ酸をコードする推定分子量28K、推定等電点pI9.4のタンパク質であることが明らかになった。データベースで検索したところ、類似性のあるタンパク質はみつからなかったことから、新奇なタンパク質の可能性が示唆された。porT遺伝子とグルタチオンS-トランスフェラーゼ遺伝子との融合遺伝子を作製し、大腸菌で大量発現させることに成功している。
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