研究概要 |
トロンボモジュリン(TM)が内皮細胞以外に歯肉上皮細胞の膜表面においても発現しているが、歯肉上皮におけるその機能はなんら解明されていない。 歯周病患者の歯肉溝浸出液は、疾病活動度を検査する際に利用できる有用な資料と考えられている。歯周炎患者の歯肉溝浸出液中にトロンボモジュリン(TM)が検出されるかをウェスタンブロット法を用いて明かにした。一次抗体としてヤギ抗ヒト-トロンボモジュリン抗体,二次抗体としてペルオキシダーゼ標識抗ヤギIgG抗体を用いた。r-TMに相当するバンドが,歯肉溝浸出液中から見い出された。したがって,歯周炎患者の歯肉溝浸出液中にTMが存在していることが確認された。そこで,トロンボモジュリン(TM)が,歯周病病態に関わりがあるのかどうかを歯周炎患者の歯周ポケットの深さ(pocket depth≦3mm,4mm≦pocket depth≦5mm,pocket depth≧6mm)の歯肉溝浸出液を採取し,浸出液中に含まれるTMの検出をELISA法を用いて行い健康患者(6人)と歯周炎患者(11人)において比較,検討した。健康な歯周ポケット(pochet depth≦3mm)の歯肉溝浸出液中においてもTM(213.2ng/ml)が検出された。歯周炎患者(4mm≦pocket depth≦5mm pocket depth≧6mm)の浸出液中には,TM量は,健康な歯周ポケットのものより2〜3倍量が有意に検出された。しかし,歯周ポケットの深さの度合に影響はみられなかった。 本研究の結果より,歯肉溝浸出液中のトロンボモジュリンが歯周炎患者の疾病活動度の一つの指標になる可能性が示唆された。
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