インプラント周囲に炎症が生じると速やかにインプラント周囲組織に炎症が波及すると考えられている。生体では歯と歯肉間には特殊な接合上皮が存在し、外来刺激のバリアーとして機能していることがしられているが、近年この部位に多機能をもつ神経ペプチドが密に分布していることが報告され、この密な神経分布が生体防御機構の一端を担っていると考えられている。今年度はインプラント周囲上皮内の神経線維の再生過程を検討するために、これまで報告がなかったラット上顎骨にチタン製インプラントを植立モデルの作製を試みた。得られた結果は以下の通りである。 1.ラット上顎骨第一臼歯を抜歯1カ月後、ピ-ソ-リ-マ-でインプラント窩洞を形成し、純チタンインプラントを植立したところ、結合組織での炎症症例は術後1週間で消退し、インプラントに対して輪走する膠原線維束が観察された。 2.インプラント周囲上皮は術後3日目からインプラントに沿って下方に増殖を開始し、植立後15日目になると、インプラント周囲上皮は天然歯接合上皮同様の形態、すなわち広い細胞間隙をもつ非角化上皮として観察され、この時期にはインプラント周囲上皮の治癒が完了していると思われた。 3.インプラント周囲の骨形成は植立後10日目より観察されはじめ、術後30日目では完全な骨結合がインプラント周囲全域で観察された。 以上の結果より、今回のインプラント植立モデルは上皮の再生過程ならびに骨形成過程を容易に観察できること、植立術式ならびに組織切片作製が容易であることからインプラント周囲組織反応を観察するのに有用なモデルであることが示された。次年度はこの実験モデルを用いて、インプラント周囲上皮内神経線維の再生過程を追求する予定である。
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