研究概要 |
本研究の目的は金合金やチタン合金などで作製された補綴物の外観にふれる部分を傾斜機能材料化して,歯冠色に酷似した色調に変え,その色調を口腔内で長期間維持できるよう耐久性を付与するための臨床的研究を行おうとするものである。 1)歯科用合金を歯冠色に変える方法の検討:歯科用合金は貴金属合金の金合金と金銀パラジウム合金,それに非貴金属合金のチタンを用い,φ12mm厚さ2.5mmの円板状に切り出し,表面を鏡面研磨まで行った。歯冠色に変えるために(1)熱処理による酸化膜形成(2)純チタン,チッ化物のイオンミキシング(3)ゾルゲル法によるコーティングを行った。その結果,(1)は貴金属合金にも有効であるが,色調が青味がかるか,灰白色になり,不適当であった。(2)は膜の密着性と被膜厚さでは優れているものの,この方法単独では金属表面を鏡面に保ったままで金属色の隠蔽を完全に行うのには,成功していない。蒸発金属元素をさらに幅広く検討する必要がある。(3)は25μm程度の被膜厚さで母材の色を完全に隠すことができるので,歯冠色に近づけるための検討を行っている。(2)と(3)の組合せによって,目的が達成できる可能性が生じている。 2)傾斜機能化した部分の組成,厚さのESCAによる同定:傾斜機能化していることはESCAにより確認した。しかしながら,新たに傾斜機能化した部分の上に,ゾルゲル法による被膜作製を試みており,この場合のESCAによる同定は次年度に先送りした。
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