扁平苔癬の生検組織切片を用い、粘膜下浸潤リンパ球におけるTunel法によるアポトーシスの検出、Fas抗原、bcl-2蛋白の発現を検索した。また、扁平苔癬の粘膜下組織からリンパ球を分離し、核染色を施して核の断片化を観察するとともに、Fas抗原の発現をFlow cytometerで解析し、末梢リンパ球と比較した。更に、扁平苔癬患者血清中のsoluble Fas抗原を検索した。その結果、以下の所見がみられた。 1 扁平苔癬の粘膜下組織のリンパ球にはTunel法で陽性に染まる細胞が存在しており、リンパ球浸潤が著明なほどTunel法での陽性細胞が多く認められた。 2 扁平苔癬の粘膜下浸潤リンパ球にはFas抗原陽性細胞が認められた。一方、bcl-2蛋白の発現はほとんどみられなかった。また、リンパ球の浸潤が強いものほどFas抗原の発現が多い傾向がみられた。 3 扁平苔癬の粘膜下組織から分離したリンパ球と末梢血リンパ球にhoechst33342で核染色を施して比較したところ、扁平苔癬の組織から分離したリンパ球の方に核の断片化がみられた。 4 Flow cytometerによって分離したリンパ球におけるFas抗原の発現を算定して比較したところ、末梢血リンパ球に比較して病変より分離したリンパ球のFas抗原陽性率が高かった。 5 扁平苔癬患者の血清中には、健常人血清と比較してsoluble Fasが多く存在していた。 以上の結果から、扁平苔癬の粘膜下浸潤リンパ球は、Fas/FasL系によって排除され続けるために、常に血中から供給されて浸潤が維持されている可能性が示唆された。
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