申請者は、平成8年度の研究期間において、琺瑯質形成不全を伴わない成人男性のゲノムDNAを用いて、野生型(正常型)ヒトアメロジェニン遺伝子のプロモーター領域および第1、第2エクソンを含むおよそ40%の領域の塩基配列を決定した。他の報告者の結果と申請者の結果を合わせると全領域の約90%が決定されたことになる。申請者が解明した塩基配列の情報は日本DNAデータバンクに登録済である(登録番号:D83729、D83730)。 申請者は、野生型(正常型)ヒトアメロジェニン遺伝子の塩基配列の決定に加えて、乳歯および永久歯の全歯牙に重度な琺瑯質の実質欠損をきたした遺伝性琺瑯質形成不全症患者およびその家族を対象に、本疾患の原因の一つに考えられている琺瑯質蛋白アメロジェニン遺伝子の構造異常の有無について調査を実施する予定である。DNA解析の実際面においては、申請者がこれまでの研究により決定した野生型(正常型)ヒトアメロジェニン遺伝子の配列情報に基づいて設計した遺伝子増幅に必要なプライマーの合成、遺伝子増幅の条件およびPCR法についての技術面での検討は終了し、いつでも分析可能な状態にある。現在、東京歯科大学千葉病院の小児歯科臨床に来院する遺伝性琺瑯質形成不全症の患児およびその家族を対象に試料収集を行っている。患児および保護者に対しては、本研究の主旨を十分に説明し、理解および同意を得た上で試料収集を実施している。最近、三重県の登志島において、新たに本遺伝性疾患の家系を見い出した。今後、この家系について調査し、研究を実施する予定である。
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