生合成酵素の検出、特性化、遺伝子クローニングによりサポニン生合成にアプローチした。 1.オタネニンジン毛状根においては、 (1)毛状根培養系におけるサポニン生産の経時変化を検討し、まずオレアナン骨格を持つginsenoside-Roが生産され、これが減少し始める頃からダンマラン系サポニン生産が上昇するという興味ある事実を見いだした。 (2)ついでオキシドスクアレン閉環酵素の検出、閉環産物の同定を試み、毛状根ミクロソーム画分に、ダンマレンジオール、β-アミリンおよびサイクロア-テノールの3種の閉環酵素活性を検出した。生成物のHPLC分析からダンマレンジオールは天然サポニンと同様20-Sの絶対配置を持つことを証明した。 (3)3種の閉環活性のうち、ダンマレンジオール合成酵素活性は他の2種あるいは他の生物種で報告されている閉環酵素とは異なり、最大活性に界面活性剤の添加を必要としまいことまた至適pHが酸性側にある点など特徴ある性質を示すことを明らかにした。 2.ホザキアヤメのシュート培養系では、 (1)フロスタン配糖体を加水分解し対応するスピロスタン配糖体を与える特異的β-グルコシダーゼを検出、完全精製し、その内部ペプチドのアミノ酸配列情報を利用し、PCR法によりcDNAのクローニングに成功した。 (2)ついでこのcDNAを大腸菌で活性酵素タンパクとして発現することにも成功し、タバコでの発現についても検討した。 これらの結果は、高等植物におけるトリテルペンあるいはステロイドサポニン生合成の鍵反応を酵素レベルまた遺伝子レベルで明らかにした初めての例であり、今後のサポニン生産薬用植物の代謝工学的研究に大いに貢献するものである。
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