研究概要 |
分子認識機能を有する人工チャンネル化合物の基本設計とその生体膜類似機能の評価を目的とした研究を,カリックスアレーン誘導体の単分子膜,及びシクロデキストリン誘導体の平面脂質二分子膜について検討した結果,以下のような基礎知見を得た。 (1)水溶液上の気液界面に形成されたカリックス[6]アレーンのper-O-酢酸エステル誘導体の単分子膜が,水溶液中の金属イオンとホストーゲスト錯体を生成することにより,膜分子間の間隙におけるマーカー物質に対する透過性の変化を示すことが,水平付着サイクリックボルタンメトリーにより明らかにされた。その際にカオチン性マーカー([Co(phen)_3]^<2+>, methylviologen^<2+>),に対する透過性は減少したのに対して,アニオン性マーカー([Fe(CN)_6]^<4->)に対する透過性は逆に増大し,錯体生成状態にあるカチオン性単分子膜とマーカーとの静電的相互作用に基づいて膜透過性の制御が行われることが示された。中性マーカーであるp-benzoquinoneの場合にもアルカリ金属イオンの存在下で膜透過性が増大し,その理由はホストーゲスト錯体生成に伴うホストの側鎖部分のコンホメーションの収縮による分子間間隙(または膜のミクロ欠陥)の増大である可能性が示された。透過性変化の大きさはCs^+>Rb^+>K^+>Na^+,Li^+の順であり,錯体形成,溶媒抽出,液間輸送におけるホストの選択性が膜透過性変化という形で反映された。 (2)アミド部位を含む長鎖アルキル型α-シクロデキストリンが,平面脂質二分子膜において半チャンネルとして機能し,K^+イオンに対して一定の伝導度(24pS)のチャンネル電流が観測された。また,チャンネルの開時間は1〜2sに達し,これまでに報告された人工チャンネルと比較して遥かに安定なチャンネルが生成することが明らかとなった。
|