我々はアポトーシスにおけるセラミド分解酵素、セラミダーゼの役割に着目し研究を行っている。今回セラミダーゼに関し、以下の事柄を明らかにすることが出来た。 1。セラミダーゼの分子種と細胞内局在性をラット成熟静止肝ならびにラット腹水肝癌細胞を用いて検索した。 (1)静止肝では、アルカリ性セラミダーゼが細胞質上清、核および細胞膜に存在し、一方、酸性セラミダーゼがミトコンドリアならびにリソソームに存在した。 (2)肝癌では、中性セラミダーゼが細胞上清ならびに細胞膜に、アルカリ性は核に、酸性はミトコンドリアおよびリソソームに存在した。 2。セラミダーゼの比活性をラット成熟静止肝とラット腹水肝癌細胞で比例検討した。 (1)アルカリ性セラミダーゼの比活性が、肝癌に比し静止肝の細胞質上清で特異的に高いことが判明した。 (2)酸性セラミダーゼの比活性は、リソソームにおいて、アルカリ性と同様肝癌に比し静止肝の方が高かったが、アルカリ性ほど顕著な差は認められなかった。 3。ラット成熟静止肝の細胞質上清で、肝癌に比し著しく高い比活性を示したアルカリ性セラミダーゼの性質を調べた。 (1)ゲルろ過カラムクロマトグラフィにより、細胞質上清に存在するアルカリ性セラミダーゼの分子量は82kDa、一方、リソソームに存在する酸性セラミダーゼの分子量は100kDaであることが判明した。 (2)アルカリ性セラミダーゼの至適pHは8.0、最大活性発現のためにデオキシコール酸を必要とするが、SH試薬や2価カチオンは必要としなかった。 結論と今後の方針 今回得られた実験結果は、癌細胞におけるアポトーシス能の消失とアルカリ性セラミダーゼ活性との関連性を強く示唆している。今後、当初考えていた核のセラミダーゼではなく、比活性が非常に高い細胞質上清のセラミダーゼに注目して研究を進めていきたい。
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