オピオイド受容体における受容体-リガンド認識機構を分子レベルで解析した。オピオイド受容体μタイプに選択的なリガンドであるDAMGOのμ/δ受容体間識別に、第1細胞外ループと第2膜貫通部位の境界領域に存在するμ受容体127番目のアスパラギン残基とδ受容体の対応する位置に存在する108番目のリジン残基の違いが重要であることを明らかにした。また、DAMGOのμ/κ受容体間識別には、第3細胞外ループと第6膜貫通部位の境界領域に存在するμ受容体303番目のリジン残基とκ受容体の対応する位置に存在する297番目のグルタミン酸残基の違い、および、第3細胞外ループと第7膜貫通部位の境界領域に存在するμ受容体316番目のバリン、318番目のトリプトファン、319番目のヒスチジンとκ受容体の対応する位置に存在する310番目のセリン、312番目のチロシン、313番目のチロシンの違いが重要であることを明らかにした。さらに、オピオイド受容体と非常に高い相同性を有するにもかかわらず、オピオイドリガンドが結合しないことが知られているOrphaninFQ受容体の非ペプチド性リガンドを合理的にデザインするための基礎的知見を得ることを目的として、オピオイドリガンドがOrphaninFQ受容体に結合できない原因となっている受容体構造の解明を試みた結果、OrphaninFQ受容体の第2細胞外ループと第5膜貫通部位の境界領域に存在するアラニン残基および第6膜貫通部位に存在するバリン、グルタミン、バリンの3つの残基とオピオイド受容体の対応する位置に存在するリジンおよびイソロイシン、ヒスチジン、イソロイシン残基の違いが重要であることが明らかとなった。以上の実験において、野生型あるいは変異型受容体発現細胞の培養のため本研究費で購入したCO_2インキュベータ-を用いた。
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