研究概要 |
プロリルエンドペプチダーゼは脳に高い活性を持ち、TRH、ブラジキニン、サブスタンスP、ニューロテンシンなど多くの生理活性ペプチドのPro-Xを切断し不活性化するが、他のペプチダーゼと異り蛋白質には作用できないオリゴペプチダーゼである。このように、生理活性ペプチド特異的に不活性化することから、代謝調節に働いていることが推定される。しかし、酵素の脳内での生理的機能は現在のところ不明である。本年は、ヒト脳プロリルエンドペプチダーゼに焦点を絞り、分子生物学的研究と酵素の立体構造の解明を目指し、ヒト脳由来の酵素遺伝子をクローニングするとともに大腸菌で発現させ、発現酵素の酵素化学的研究を行った。 ヒト脳cDNA Iibraryをスクリーニングし、プロリルエンドペプチダーゼをコードするcDNAを得た。このcDNAの塩基配列をジデオキシ法で決定し、ヒト脳プロリルエンドペプチダーゼcDNAは2130bpのORFからなり710残基のアミノ酸をコードしており、これより分子量80732Da、当電点5.47と推定された。ヒト脳酵素は、ヒトT-cell、ウシ脳、ブタ脳、F.meningosepticumのアミノ酸配列とそれぞれ99%,94%,96%,38%の相同性を有していた。それらの配列を比較すると、活性に関与すると推定される3残基(Ser,His,Asp)が存在すること、また後半に比較的高く保存されていることが分かった。 この遺伝子をtac promoterを有する発現用ベクターpFM005に組み込み、LA培地(1.5L)で大量培養をおこない、Toyopeanl HW-65CとDEAE-Toyopeanlで単一に精製し、酵素化学的性質を明らかにした。
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