研究概要 |
ヒト臍帯静脈とウシ大動脈の血管内皮細胞を用い、[^<14>C]アスコルビン酸(Asc)が特異的に結合する膜蛋白質成分(アスコルビン酸トランスポーター:AscTr)を単離し同定すると共に、この血管内皮細胞を用いて、Ascの細胞内への輸送メカニズムとアポトーシス抑制効果を調べた。 ウシ大動脈血管内皮細胞BAE-2への[^<14>C]Asc取込みは、飽和の細胞密度ではその1/4の疎らな細胞密度に比して顕著に減少したが、その原因は細胞周期がG1期の増加とG2+M期の減少にあり、細胞どうしの接触による有効AscTrの減少によるものではないことを示した。Ascの細胞内取込みはデヒドロアスコルビン酸(DehAsc)に比して、投与量増大による減少が少なく、共存グルコースによる減少も少ないことが明らかになり、DehAscより安定して細胞内取込みを受けることがわかった(Mol.Cell.Biochem.,in press 1997)。 脂質過酸化剤t-BuOOHで処理されたBAE-2細胞は細胞膜に傷害を受けてアポトーシスを起こすが、この時、酸化抵抗型Asc誘導体であるAsc-2-0-phosphateを投与しておくと、t-BuOOHによる細胞膜傷害も細胞死も顕著に抑制されるのに比して、未修飾Ascでは無効であることを見出だしたが、このメカニズムとして、Asc-2-0-phosphateが脱リン酸化されて細胞内に遊離Ascとして取込まれ、細胞外よりも67-120倍高濃度に細胞内に蓄積されるのに比して、未修飾Ascは9-12倍の細胞内濃縮に止まるためであることを示唆した(Free Rad. Res.,in press 1997)。 BAE-2細胞の細胞膜の画分からCHAPSなどの界面活性剤での膜蛋白質の可溶化し、AscTrと推定される[^<14>C]Ascと特異的に結合する成分をSlot blotで見出だしたが、未だ結合活性が弱い。
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