ビタミンC(アスコルビン酸:Asc)を細胞内へ輸送するAsc特異的輸送担体(Asc トランスポーター:Asc-Tr)の存在が示唆されているが、その分子的実体、生化学的性質は全く明らかにされていない。そこで、ウシ大動脈の血管内皮細胞を用い、[^<14>C]アスコルビン酸(Asc)が特異的に結合する膜蛋白質成分(アスコルビン酸トランスポーター:AscTr)を単離し同定すると共に、この血管内皮細胞を用いて、Ascの細胞内への輸送メカニズムとアポトーシス抑制効果を調べた。 まずウシ大動脈由来の血管内皮細胞(BAE-2)から粗膜画分を抽出して得られた膜タンパク質と[^<14>C]Ascとの結合をドットブロッターを用いた方法で解析する実験系を確立した。BAE-2細胞の膜タンパク質の[14C]Asc結合は、非ラベルAsc、Asc輸送阻害剤で阻害され、対照タンパクBSAには[14C]Asc結合が殆ど認められなかったことから、このAsc結合が特異的であることが示唆された。 次にラット腎臓から粗膜画分を抽出し、硫安塩析で[^<14>C]Ascとの結合を解析した。ラット腎臓のAsc結合タンパクは活性を保持したまま界面活性剤CHAPSにより最も効率よく可溶化された。腎粗膜可溶化タンパク質の結合活性は、タンパク濃度、100μMまでのAsc投与濃度に依存して増加した。この結合は、非ラベルAscとその光学異性体であるiso-Ascで阻害されたが、酸化型のDehAscでは阻害されなかった。また、ナトリウムイオンはこの結合には影響を与えなかった。この腎粗膜可溶化タンパク質をゲル濾過クロマトグラフィーで分離した結果、分子量約300000と約8000の溶出位置に2つの高いAsc結合活性のピークが認められた。今回得られた結果は、膜由来のAsc結合成分がAsc-Trであることを示唆する.
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