ビタミンC(アスコルビン酸:Asc)を細胞内へ輸送するAsc特異的輸送担体(Ascトランスポーター:Asc-Tr)の存在が示唆されているが、その分子的実体、生化学的性質は全く明らかにされていない. そこで本研究では、ヒト単一染色体導入細胞を用い、Ascの取り込み量を比較しAsc-Tr遺伝子の存在している染色体を特定して遺伝子の同定を行うべく企図した.微小核融合法でヒト単一染色体(1〜22番、x染色体)を導入したマウス線維肉腫A9細胞への放射能標識[^<14>C]Ascの取り込み量を比較した結果、未導入細胞と比較しそれぞれ約1.6〜2.0倍にまで増加した特定染色体導入細胞を見出だしたが、このAsc取込み増加分はグルコース(Glc)の同時添加では増減なく、非標識Ascの同時添加で解消されたことから、Glc-Trを介したものではないことが示唆された.さらにAsc-Tr特異的阻害剤であるPalytoxin同時添加によってAsc取り込みがほぼ完全に抑制された. さらに、Ascの取り込み量が増加する誘発剤を検索したところ、Dibutyryl cAHPで約2.3倍と最も取り込み量が増加していた.さらに、染色体導入細胞にDibutyryl cAHPで処理した際、取り込み量が約4.5倍にまで増加した. 続いて染色体導入細胞、未導入細胞、および、これらのDibutyryl cAHP処理細胞からmRNA抽出しDifferential Display法で検討したところ、Asc取込み量に相関して増減した特異的バンドが検出された.この塩基配列の解析と同時に、cDNAの導入によってAsc-Tr活性が発現するかを調べている. 一方、ウシ大動脈由来の血管内皮細胞(BAE-2)およびラット腎臓から粗膜画分を抽出して得られた膜タンパク質と [^<14>C]Ascとの結合をドットプロッターを用いた方法でTr活性を測定して、腎粗膜可溶化タンパク質をゲル〓過クロマトグラフィーで分離した結果、分子量約300kDaと約8kDaの溶出位置に2つの高いAsc結合活性のピークが認められ、この精製も継続中である.
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