研究概要 |
レチノイレーションによって引き起こされる蛋白質リン酸化酵素A(PKA)の機能変化と分化シグナル伝達機構との関係をヒト骨髄球性白血病細胞株(HL60細胞)を用いて検討するため、先ず、PKAのI型とI型(PKAIとPKAII)の調節サブユニット(RI,RII)上のレチノイレーションによるリン酸化酵素活性調節及びcAMP結合親和性変化の解析を行った。無血清培養液中で大量に培養したHL60細胞(2x10^8細胞)を均一破砕、遠心して粗選出液を調製しこれを使用してPKA活性を測定したところ量-反応関係に直線性は認められず酵素活性の定量を行うことは非常に困難であった。そこで、Mono Qカラムクロマトグラフィーを用いてPKAIとPKAIIを分離することを試みた。粗抽出液をカラムに適用しNaClグレジィエントを用いて溶出した各フラクションについてPKA活性を測定した。その結果、両者を分離することができた。さらに、両画分中に存在するPKA活性の量-反応関係に直線性が認められたので酵素活性の定量が可能であることが判明した。以上の結果を踏まえて、RA処理した細胞を調製し、Mono Qカラムクロマトグラフィー後のPKAI(RIを含む)とPKAI(RIを含む)画分を集め、両画分のPKA活性、リン酸化酵素活性を定量的に測定して各々の酵素活性を無処理細胞中の同酵素活性と比較している。また、両処理細胞から得られたPKAI(RIを含む)とPKAII(RIIを含む)画分を用いてcAMP結合親和性を検討する予定である。
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