金被覆ミクロキャピラリーLC装着質量分析による癌特異ペプチドの超高感度構造決定

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08877356
• 研究機関: 大阪医科大学
• 研究代表者: 中西 豊文 大阪医科大学, 医学部, 講師 (10247843)
• 研究分担者: 清水 章 大阪医科大学, 医学部, 教授 (00028581) ; 中川 俊正 大阪医科大学, 医学部, 助教授 (30237226)
• キーワード: 超高感度分析 / エレクトロスプレーイオン化質量分析 / 自家製ミクロキャピラリーカラム / ナノLC / アミノ酸配列 / 完全分子

研究概要

異常ヘモグロビン症、家族性筋萎縮性側索硬化症、家族性アミロイドポリニューロパチーなどの疾患は体液中に存在する構造変異蛋白(変異ヘモグロビン、スーパーオキサイドジスムターゼ、トランスサイレチン)を検出・同定することにより確定診断可能である。我々のグループは、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESIMS)法を利用し、微量サンプルでしかも迅速に診断し得る分析システムを確立し、学内外より依頼分析を行っている。
しかしながらより微量な腫瘍マーカーや癌特異抗原ペプチドの検出に応用するためには、ESIMS法の高感度化が必須である。そこで、不活化ヒューズドシリカキャピラリーカラムの先端に少量のシリカゲルを詰めフリッツを形成させ、更に少量の分析用ポリマー系あるいはシリカ系逆相樹脂を充填して高感度分析用自家製カラムを作成した。このカラムを直接、分析計(フィニガンマット社製TSQ7000)に接続し、10方バルブにて試料注入、脱塩、濃縮を行った後、目的物を溶出させESIMS分析した。
本年度は、作成した自家製カラムを用いて各種蛋白質標品(Lysozyme、Apomyoglobin、Cabonic Anhydarse B、Ribonuclease A & B)をESIMS法で分析しその分析感度を検討した。その結果、総注入量25fmolで、S/N比>5が達成でき、従来のLC-ESI/MSに比して感度が約20倍上昇した。また、各濃度に調整したNaCl溶液を蛋白溶液に共存させ分析した結果、直接注入法では分析できなかった1MのNaCl共存試料でも、十分脱塩効果が得られた。
今回得られた検出感度は、癌特異抗原ペプチドや各種腫瘍マーカーの検出に対応可能なレベルであった。(第44回米国質量分析学会にて発表)

研究成果

• [文献書誌] Miyazaki A,Nakanishi T,Kishikawa M,Shimizu A,et. al.: "Post-translational modification from methionine to aspartic acid residue on a variant hemoglobin,Hb Bristol,a proof by ESI/MS/MS." J.Mass Spectrom.31(12). 1311-1313 (1996)
• [文献書誌] Nakanishi T,Miyazaki A,Kishikawa M,Shimizu A,et. al.: "ESI-MS/MS analysis of peptides derived by enzymatic digestion of oxidized globin chain,an improved method to detect substitution in the hemoglobin "core"." J. Am. Soc. Mass Spectrom.7(10). 1040-1049 (1996)
• [文献書誌] Kishikawa M,Nakanishi T,Miyazaki A,Shimizu A,et. al.: "Rapid detection of abnormal transthyretin from patients with familial amyloidotic polyneuropathy by HPLC/ESI-MS using material precipitated with specific antiserum." J.Mass Spectrom.31(1). 112-114 (1996)
• [文献書誌] Nakanishi T,Kishikawa M,Miyazaki A,Shimizu A,et. al.: "Assignment of the ions in the ESI-MS spectra of tryptic digest of the non-derivatized globin,covering the whole sequence,a rapid diagnosis for hemoglobinopathy." J.Mass Spectrom.30(12). 1663-1670 (1995)