研究概要 |
絆創膏が皮膚に及ぼす物理的刺激についてミクロレベルで検索するため実験と事例検討を行った。実験Iでは健康な成人と老人の4名に24時間貼付後の絆創膏に付着した扁平上皮細胞の変化を検討した。実験内容は(1)絆創膏の物性A群(紙,工業用ビニールテープ,B群:不織布,布,粘着製伸縮包帯)(2)絆創膏貼付・剥離時の皮膚へのストレス(老人は無し)(3)貼付部位(頚部,腹部,背部:老人は腹部のみ)である。実験IIでは健康な成人に同じ部位に貼付した際の角質層の変化を検討した。実験内容は(1)絆創膏の物性(A:工業用ビニールテープ,B:粘着性)(2)貼付部位は腹部(3)皮膚へのストレス(貼付1分後に剥がす行程を同じ場所で30回繰り返す)である。また,発赤や表皮剥離のある4名を事例検討した。その結果,実験Iでの細胞の様相はA群では隣接した細胞同士が結合した状態で均一に配列し,B群では不均一で凹凸状と違いがあり,特に絆創膏剥離時の皮膚へのストレスをかけた時と頚部に細胞の様相と密度の違いが著明であった。また,老人では布絆創膏に付着した細胞の様相が成人と異なるという興味深い所見を得た。実験IIでは,回を重ねる度に細胞の密度が徐々にAでは低くBでは高くなり,共に隣接した細胞の結合部分の重なりが大きくなった。発赤はBの方が強く痂皮を形成した。事例の発赤部の細胞量は明らかに多く,細胞同士の重なりも大きく,個々の細胞が引き剥がされたように崩れているものが多かった。表皮剥離部の扁平上皮細胞は,隣接した細胞の結合部が突起でかみ合わさり,明らかに有棘層の細胞であり剥離による障害の強さが感じられた。以上のことより,絆創膏が皮膚に及ぼす影響は,ミクロレベルでは剥離時の角質層から有棘層に至るまでの細胞の深さと個々の細胞の崩れが大きく関連しており,機械的刺激を同一部位に何度も繰り返せば皮膚への刺激が強まることが予測される。
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