[研究目的]冷罨法は、看護の場において日常的に行われている看護援助行為の一つである。冷刺激が皮膚の温度受容器を介して温度調節中枢を刺激することによって、あるいは、この冷刺激を直接皮下の毛細血管、温度受容器や末梢神経に作用させることによって、種々の身体的苦痛を改善するとされているが、頭部冷罨法の効果については、冷却効果はなく貼用することによる精神的安楽のみが強調されてきた。そこで、暑熱環境下において、高体温時の前額部氷嚢貼用が鼓膜温に与える影響について実験し検討した。 [対象と方法]健康な男性6名(平均23.2±3.1歳)の被験者に、室温42℃、湿度35%に設定した人工気候室で実験を実施した。被験者は仰臥位安静で前額部に氷嚢を貼用し、その水温を20℃・10℃・0℃と変化させ、冷却は15分間行い、鼓膜温(Tty)、前額部皮膚温(Tsfh)、前額部皮膚血流(BFfh)を測定した。 [結果および考察] 1.暑熱環境下の高体温状態では、前額部氷嚢(水温0℃〜20℃)貼用によってTtyは低下した。 2. Ttyの低下は水温が低いほど大きく、冷却の程度に対応していた。 3. TsfhとBFfhは、どの貼用温度に対しても減少し、冷却温度が低ければ低いほど減少する傾向性が認められた。 以上の結果から、暑熱環境下の高体温状態では、前額部氷嚢貼用による冷却は脳温の指標となる鼓膜温に影響すること、その影響は冷却温度に左右されることが示唆された。
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