研究概要 |
トウガラシ(以下RP)の辛味成分カプサイシンは、最近の研究で、マウスにおいて持久力を増加させ、これがカテコールアミン分泌による脂肪酸利用の増加のためと報告がある。そこで、最大運動強度の80〜90%となる踏台昇降運動において、RP摂取がヒトの心肺機能、エネルギー代謝および内分泌系に及ぼす影響について検討した。 1. 実験方法 被験者は、20〜22歳の健康な男子5名、RPは、0.1g,0.5g,1g(市販品、カプサイシン含量2.5mg/g)を用いた。RP摂取後、安静60分、踏台昇降運動(40cm、30回/分)10分、回復30分を測定した。 2. 結果 心拍数は、0gは踏台昇降運動10分で心拍数が172拍まで上がったのに対し、0.1gは171拍、0.5gは160拍、1gは164拍と有意な低下であった。血糖値は、安静1時間、運動後、回復時でRP摂取有無による差はなかった。血中乳酸値は運動後、回復後でRP群の方が低く、運動直後、回復20分後で0gと1gにおいて有意な差であった。特に運動直後では、0gで8mmol/lまで上昇したのに対し、RP群は6mol/l以下であった。RPは乳酸蓄積を抑え、またその効果は量に依存していた。血中脂質はRP摂取後の安静1時間で、遊離脂肪酸濃度を上昇させなかった。一方運動後では、0gは遊離脂肪酸濃度が減少したのに対し、RP群は上昇する傾向にあったが有意な差ではなかった。トリグリセライド濃度については、RPの摂取有無による差はなかった。アドレナリンでは、運動後の分泌量は、0gが0.13ng/ml、0.1gが0.08ng/ml、0.5gと1gが0.07ng/mlで、RP摂取がアドレナリン分泌量を抑え、RP量に依存していた。ノルアドレナリは、運動後、0gが0.92ng/ml、0.1gが0.79ng/ml、0.5gと1gが0.75ng/mlで、分泌量の増加を抑え、RP量に依存した。ドーパミンは安静時、運動時、回復時において影響はなかった。
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