走化性阻害因子の検討の前に、より正確な結果を得るため、Helicobacter pylori(Hp)の走化性検出に関してさらに実験条件改善の検討を行った。 (1)HpのUrease欠損株も野生株同様、尿素に対して正の走化性を示したが、尿素が比較的分解され易い化合物であるため、分解生成物の二酸化炭素に因る影響が示唆されたため結果に疑問がもたれた。そこで、実験中に分解する尿素の定量を行うと共に、尿素と共通の構造をもちUrease Inhibitorとして知られるFlurofamide(FFA)を用いて走化性を検討した。この実験により尿素の分解による影響はキャピラリーに対して菌浮遊液が多いため殆ないことが判明した。さらにurease欠損株でも野生株同様、FFAに対して正の走化性を示すことが明かになった。よってureaseに関係なく尿素を感知する受容体の存在がさらに確かになった。 (2)悪環境下に細胞がさらされることから真実の走化性を知るには無理があると思われたので、試験的に胃内の環境により近い状況をえるため、粘液条件下での測定と、栄養源(運動亢進効果の向上)としてメチオニン/血清存在下での測定を試みた。いずれの場合も走化性が亢進した。これによりリン酸カリウム緩激液のもとでおこなうより、これらの条件下での測定の方が適しているように思われた。しかし粘液環境下では水溶液中と異なる結果を示す誘因物質もあり、これには鞭毛に対する物理的要因が考えられた。また、血清中ではさまざまな要因が考えられるため他の因子との相互作用を考慮する必要が生じ、適切な条件ではないと判断した。これらの結果より、阻害物質を検索する以前にいくつか検討を要する条件があることが明かになった。また、多くの物質を検討するには現在の測定法に無理があり、簡便化を図る必要がある。現在これについて検討中である。 またpKF3を用いて十数kb-4kbのCPY3401のライブラリーを作成し、これにトランスポゾンを挿入した。 施設の制限から今年度はDNAに関するその他の実験は先送りにした。次年度にクローニングを行う。
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