伸張性収縮を過度に反復した骨格筋は筋の静止長が事前に比較して短くなり、そのため運動後では関節を充分に伸ばせなくなることが報告されている。本萌芽的研究は、このような運動後の筋静止長の短縮現象に着目して、関節の運動にともなう関節抵抗の履歴現象を指標にするオーバートレーニング監視法を開発することを目的にする。平成10年度は3年計画の最終年度である。過去2年の観察によって、ランニング負荷は短距離・長距離とも関節抵抗(PT)を増大させ、その増大幅は血中CK値の上昇度と相関することを認めた。その理由として、PT増大は筋組織の浮腫と微細損傷によるものであると仮定し、本年度はこれを確かめる実験観察を行った。対象は非運動選手の大学生男子8名である。運動負荷条件としては立位での脚内転運動で、足関節に10RMのウェイトを付け、10回反復を1セットとして3セット行わせた。この運動の前と48時間後に大腿部横断MRI像を撮影して筋横断面積を求めるとともに、PTと血中成分(CK.CKアイソザイム、ミオグロビンなど)のデータを得た。その結果、運動負荷後のMRI像筋横断面積としては内転筋群で3.6%およびハムストリングで3.9%増大し、PTは約42%増大していた。また血中CKは10.6%上昇していた。これらの所見から、運動後のPT増大は筋横断面積の変化と関係があるのではないかと考えられ、オーバートレーニング監視法としてのPT測定はある程度有効であると推察された。
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