今年度は、昨年度の研究をうけて、以下の3つの研究を展開した。 まず、2年目における小学校教師の成長過程を分析した。昨年と同一教師4名を対象に、4月、5月、6月、9月、11月、2月の合計6回、国語科授業をビデオ記録を取り、分析している。さらに、昨年度の教授経験がどのように活用されたかに関するインタビュー・自由記述による調査を行なった。本年度は、偶然であるが3名の教師が1年生を担任し、残り1名が昨年の学級の持ち上がりということになった。1年生を担任した3名の教師は、昨年度の教授経験(特に学習指導)にはほとんど役に立つことは見当たらないと指摘した。その理由としては、(1)昨年度担任した中学年の子どもとは1年生はまったく違うということ、(2)教材教授経験がないこと、の2つが主としてあげられた。一方、学級運営もしくは授業運営に関しては、昨年度(1年目)の失敗経験を踏まえて、よりコントロールを強化したり、学級新聞を頻繁に出すことによる保護者との関係に基づく子ども理解を図るなど、工夫がみられた。また、持ち上がりの教師は、教師自身に心的余裕は生まれるが、授業形態、学級経営についての大きな変化はみられないようである。 また、昨年度に行なった初任者教師の指導技術と子ども理解との関係を明確にするために、1昨年実施された経験教師(15年目・1年生担任)の発問後の持ち時間と子ども理解の変容を明らかにするために、授業プロトコルを作成し、現在分析中である。 さらに、教師の実践的知識獲得過程を明らかにするために、5年目の女性教師が自らの授業実践を振り返り、そこに現われた問題状況への想定される対処行動と実施した対処行動と実施理由のデータを整理し、現在分析中である。
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