本課題は、身体認識の現況と重ねあわせて、文化、芸術、教育を社会的背景から連鎖的に再考するものである。本年度は以下の項目から調査がなされた。 1、小、中、高等学校の生徒や大学生、一般人が「身体」をどのように認識しているかという意識調査 2、筑波大学、東京芸術大学、国立大学教育学部、私立大学美術系大学のカリキュラムにおける「身体」との関連性の現況調査 3、「身体」にかかわる教科書、教援書、人体表現に関する文献などの資料整理 4、これまでの美術や美術教育とかかわってきた「裸体」や「人体」の史的研究 5、医学で用いられる「人体解剖図譜」、献体解剖による人体構造などの歴史を、上記の3と重ね合わせることによる、「身体」認識の社会背景の関する考察 これらの多岐にわたる調査は、研究計画での初期の提示状況以上に、多くの時間と経費が資料収集と整理に要するものであった。そのためデータベース化は現在も継続して行なっている状態である。しかしながら提示されたアンケートや作品資料、大学機関や書店から収集された多くの文献資料は、今後の研究に際して、大変に貴重なものとなった。また本研究に関しては、論文、大学紀要を通じて発表したり、「身体」を表現した自己の作品を展示することで提起した。 本研究は、今後とも美術教科における「表現」と「鑑賞」の関係を再構築し、さらには美術を他の研究領域と重ねあわせて、現在措定されている研究領域間の連動性、新たな教科構造への展開の手掛かりを得るうえでも重要な意義を担うものになると確信している。
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