創発性をもつ新しい虫型人工生命の基本モデルを提案する。今回の研究で提案する人工生命は、人間が直観的に実験データからいろいろな現象を発見できるように、人工生命自身が新しい関数を発見する。その基本モデルを提案する。関数発見を実現する個々の個体を「虫」と呼ぶことにする。虫の遺伝子は種々の関数、変数、定数より構成される。まず、最初に様々な関数を遺伝子として持つ多数の虫をランダムに生成する。生成された様々な虫は観測データを餌として捕獲する。すると、虫の内部エネルギーが高くなる。すべての虫が観測データを捕獲した後、生殖を行う。この時、全く同じ遺伝子構造を持つ虫を同種、異なるものを異種とみなす。今回、有性生殖・無性生殖の概念を提案し、同種と異種によって生殖が異なるようにする。有性生殖とは同種の間で交叉することを意味し、無性生殖とは交叉を行わずに、自分と全く同じ遺伝子構造を持つ虫を複数誕生させることである。生殖後、虫の遺伝子の一部は突然変異によって変化する。世代が進むにつれて、観測データに一致する虫が生き残り、最終的に観測データに一致する虫が出現する。今回のシステムでは、有性生殖・無性生殖の導入、同種の生存数に制限を設けることにより、未知関数の探索能力が大きく向上する。モデルの妥当性を確認するために、ケプラーの法則、スネルの法則等の既知の法則に従う観測データや光学データをシステムに入力すると、入力データに一致する関数を発見できた。また関数発見能力が十分とはいえないが、今回提案する虫型人工生命は未知関数発見能力を有することがわかった。以上より、将来的には発見や直観などの人間のみが有する能力を人工生命が代替もしくは補佐できる可能性が十分にあるといえる。
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