本研究の主目的であるラフ集合による情報検索デモルにつき、まず、基本的なラフ近似検索モデルを定義した。これから派生的に生じるファジィ集合モデルとクラスタリングについて考察し、さらに、ファジィ集合モデルのラフ近似について議論した。これらの成果は、本研究の第一段階の基本的成果として、Journal of the American Society for Information Scienceに刊行される予定である。 この基本的成果を発展させた理論的研究の一つとして、ファジィマルチ集合モデルとラフ集合モデルとの関係を考察した。ファジィマルチ集合モデルは、最近筆者らが新規に提案した演算体系によって、様々な応用が可能となるが、ここで示したのは、ラフ集合モデルへの応用である。この研究成果を、ラフ集合と機械発見への応用に関する国際会議において発表した。 さらに、最初に挙げた研究のいま一つの方向を発展させることにより、情報検索のためのファジィクラスタリングに関する考察を行った。ラフ集合自体、カテゴリー化の働きをもつため、データ解析におけるクラスタリングと密接な関連をもっている。通常はクリスプ集合のクラスタリングが考察されるが、この発展形として、ファジィ集合のクラスタリングが考察されなければならない。また、情報検索におけるクラスタリングのための空間はユークリッド空間ではなく、L1空間が優ることが知られている。ここでは、L1空間にもとづくファジィクラスタリングの方法を開発した。この成果は、国際統計計算学会において発表された。
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