研究概要 |
まず「動きのある気象景観」という問題を、微視的な見地から(1)空気の流れ、(2)粒子の密度分布、(3)光学的現象の三点に分け、次に大きな空間での巨視的な問題に発展させることを考えた。 これらの問題に対し、空気をすべてparticleと考えることで、問題の単純化を試みた。空気そのものを、各部位の成分によりair-particle(空気のみ),rain-paticle(雨)、cloud-particle(雲や霧の粒子)とし、それぞれの分布や動きで景観を表現する。このうち、air-particleは不可視であり、レンダリングの対象とはならないが、質量を持ち、物体との衝突によって作用を及ぼすものとする。rain-particleは水粒子であることから屈折、分光、反射を、cloud-particleは光の減衰と散乱を考慮に入れてレンダリングする。このうち、cloud-particleは既に開発済みである。 空気の流れを表現するため、まずair-particleと物体との単純な衝突モデルを考えた。衝突する物体は簡単な自律成長モデルに従って生成した樹木とし、葉や枝、幹などの揺れとして観測されるようにした。風の強さを微風から強風、暴風、突風などを想定して与え、樹木の各部位に当たる力から揺れを計算し表現した。また、これを実際の樹木の映像と比較してみたところ、視覚的にはかなり近い効果が得られていることが確認できた。 ところで、rain-particleのレンダリング技法の確立のため、レンズ系による屈折現象を再度確認する必要があった。ただし、過去のCGでは、分光の現象を単純かつ高速で、うまく表現できる屈折モデルは見当たらず、この技法の開発から着手した。さらに、これを大域的に応用することで、「地平線に沈む太陽の視覚的な歪み」や「虹」の現象が再現できた。いずれも実写と比較して十分表現力のあるものであると認められた。
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