「動きのある気象景観」という問題を、咋年同様1.空気切流れ、2.粒子の密度分布、3.光学的現象の三点に分け、次に大きな空間での巨視的な問題に発展させるという計画に基づいた。まず、昨年は空気をすべてパーティクル(particle:粒子)と考え、各部位の成分により空気・雲・雨の粒子として、それぞれの分布や動きで景観を表現する可視化技法を開発し、本年は巨視的な動きのファクターとなる「気流」の発生と、その影響によるパーティクルの「運動」と「状態変化」に焦点を絞った。 気流の影響として、山岳などにおいて発生する気流によって雲や霧が発生し、条件が揃えば降雨となるという現象を考えた。まず気流の流れは、日照・湿度・気温などの要素と、地形・高度・湖沼・植生、などの環境の影響を考慮した簡単なモデルによって求めた。次に気流によってパーティクルが運搬され、それぞれの場所の環境要因によって空気・雲・雨の各パーティクルの間の状態推移が行われるようなモデルを作成した。これらの計算によって求められたパーティクルの時系列変化を映像化するため、昨年開発した風による草木の揺れ(パーティクルの衝突)、霧や雲の発生・消失・流れ(空気・雲・雨の各パーティクル間の推移)、虹の発生(雨パーティクルによる分光)などのCG(コンピュータグラフィックス)技法を使って表現した。 現在、これらの状態決定および可視化技法の質的向上を試行中である。簡易的なモデルであるために景観の「自然さ」の表現が難しく、揺らぎの与え方に課題が残っている。また、これらによって生成した気象景観(動画)映像が仮想空間の背景映像として、どの程度臨場感を向上させるか、あるいは他にどのような効果を持つかについても調査中である。
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