研究概要 |
コンピュータによる強調作業支援(Computer Supported Cooperative Work)を想定しながら,主としてその理論的な基盤そのもの,また特定の分野に限定せずに,それらの応用について,その可能性を追求している. 今年度は,理論的アプローチとして,統合交渉プロトコルとしてZlotkinらにより提案されているゲーム理論にもとづくモデルに対して,その拡張をはかった。すなわち,2エージェントでの協調的問題解決における交渉可能性の尺度である「交渉領域」を,そのとりまく状況に応じて設定できるような手続の提案を行った。また,交渉解として尺度として固定されていた「Nash交渉解」以外に「Kalai-Smorodinsky交渉解」での交渉基準を提案した。これらの提案を通じて,理論的な枠組みとしての位置づけであった統合交渉モデルを,実問題に適用可能なモデルに近づけることができたと言える. また,応用的アプローチとして,人が自分自身の考え方を固めていく過程や議論を通じて集団や個人の意見を収束させていく過程に注目し,その構造モデル化のための基礎研究に加えて,グループ意志決定における発想支援や合意形成を支援していく問題を捉えた。すなわち,グループKJ法におけるラベル集めの段階で,ラベルを表現している文からキーワードを抽出し,そのキーワード間の関係を構造化することによって,参加者の共通意志や相異意志を含めたラベルの解釈にもとづく思考空間表現について提案するとともに,そのプロトタイプを開発した.さらに,これらの情報をどのように協調的問題解決を伴うグループワークに活用していくかが今後の課題である。 以上の成果に加えて、現在強化学習によるマルチエージェントモデルの解析と大量データからの有効な知識獲得方法について検討を始めている.
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