研究概要 |
雪泥流(slushflow)は、積雪が水で飽和してどろどろ状態になって流れる現象をいい、最近の暖冬化で厳冬期でも各地の渓流内で発生して死亡事故を伴うなど社会的問題となっている。自然界では,その発生の瞬間と運動状態を実見することは困難なたま、研究は主として新潟大学積雪地域災害研究センターの低温環境実験室と科学技術庁防災科学研究所の新庄雪氷防災実験研究支所の人工降雪装置の共同利用で行われた。さらには、各地の渓流の雪泥流発生状況調査を行った。また、雪泥流の発生には、主として降雨が発生条件であることから、新潟県内で降雨の計測を展開して雪泥流発生との相関関係が降雨気象条件下の融雪機構の解明にも務めた。これらによって得られた成果は概略次のようである。まず模型斜面の水流と雪泥流衝撃実験から、1.雪泥流は凝集構造をもつ特徴的な衝撃波形が得られた。2.大きい粒子の雪泥は小さな粒子を併合して成長することが明かとなった。3.簡単な実験から水潤雪は凝集性が卓越していることが示された。4.雪泥流の再現実験は非常に難しいが、雪の重量の3〜4倍の水が供給されないと流電化が生じないことがわかった。自然界では流域の面積と雨や融雪水の流出関係が重要であることが示唆された。5.降雨時の融雪機構として雨に取る融解の他、潜熱・顕熱の寄与が大きいことが明かにされた。この成果は、融雪土石流の発生予測にも利用される。6.新潟県南魚沼地方で毎冬雪泥流の発生する河川がいくつかあることが判明した。この河川での長期モニタリング観測が今後必要である。7.雪泥流の凝集構造の理論的考察を試みたが、未だ不完全のものであり今後も研究を続けることとした。
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