研究概要 |
本研究は,環境水に伴って体内に摂取された様々な化学物質が,人体にどの程度摂取され,どの臓器でどのような代謝を受け,最終的にどの臓器に蓄積され,どのような毒性発現がありうるかを簡便に評価するために,数種のヒト細胞からなる複合培養細胞系を利用した簡易模擬人体システムに関する基礎研究を行うことを目的としている. 本年度は,人体の主たる摂取経路である小腸上皮と代謝系としての肝臓組織,そして毒性発現の標的細胞を,培養用の簡便な膜支持浮遊培養装置を用いて3つの細胞層からなる簡便な混合培養法の確立を行った.すなわち,ヒト由来の小腸上皮細胞株・ラット正常肝細胞・標的細胞の代表としてヒト正常2倍体線維芽細胞の3層培養システムである.これらをそれぞれ分化状態に保持したまま1-2週間同時に培養するための培養条件の確立を行った.また,モデル毒性物質として蛍光標識剤や農薬を用いて,小腸上皮での透過・肝細胞による代謝・標的細胞における毒性発現について,基礎的な検討を開始することができた. 次年度においては,このような簡便なシステムとは別に,それぞれのコンパートメントを組み上げた後に,血流を模したポンプ駆動灌流経路で接続する複合システムも開発し,システムとしての種々の操作条件の検討を行う予定である.
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