胃プロトンポンプ(胃酸分泌酵素・H^+/K^+-ATPase)の転写制御機構を明らかにする研究の過程で発見したGATA・DNA結合蛋白質(GATA-GT1と-GT2)のうち、GATA-GT1はDNA結合領域にAキナーゼとともにCキナーゼによって共通にリン酸化され得る部位があるなど、複数の細胞内情報伝達経路との係わりが示唆されるため、興味深い転写調節因子である。本研究では、またGATA-GT1の細胞内制御様式を明らかにすることを目的とした。ラットのGATA-GT1をCHO-K1細胞に安定に発現させ、GATA-GT1の細胞内分布をカルボキシ末端側に対応する部位特異的抗体を用いてウエスタンブロッテイングにより調べると、すべて核に移行しており可溶性画分には認められなかった。一方、ジブチリルcAMPを培地に添加した場合に同様の分析を行うと、GATA-GT1は速やかに細胞内より(9時間)分解消失した。この変化は可逆的であり、培地からジブチリルcAMPを除くと、再びGATA-GT1は合成され、核に移行した。各種薬剤を添加しGATA-GT1の分解がどのように変動するかを検討し、以下のような結果を得た。Aキナーゼの阻害剤では分解が抑制され、細胞内cAMP濃度を上昇させるコレラ毒素によって分解が促進された。しかし一連のCキナーゼ系の昴進を促す試薬は影響を与えなかった。従って観察された現象は、細胞内cAMP濃度の上昇とそれに続くAキナーゼの活性化が関与していると考えらる。さらに各種プロテアーゼ阻害剤の効果を検討し、プロテアソームが関与している可能性を示した。
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