生体内のカルシウム濃度維持に関与するホルモンの1つのカルシトニン(CT)は骨粗鬆症の治療薬として使用されている。CTは32のアミノ酸からなるペプチドホルモンで哺乳動物から魚類と広い生物種に分布しているが、人のCTよりも魚類のCTが数十倍効果が高く、治療薬としてはウナギや鮭のCTが専ら用いられている。ウナギCT(エルカトニン)は患者の骨塩量の増加の他に、鎮痛作用も発揮する。今年度はウナギ脳からエルカトニン受容体遺伝子をクローニングして受容体構造を決定し、人の受容体構造と比較して作用の違いを説明すると同時に、鎮痛作用についても考察することを目的として研究した。 ウナギCT受容体遺伝子をクローニングするために、既にクローニングされているヒト、ラット、マウスおよびブタCT受容体遺伝子配列から良く保存されている領域を選んでsense primer DNAを、またpoly A領域からantisense primer DNAを設計して、新鮮なウナギ脳から抽出したtotal RNAを鋳型として、RT-PCRを行った。ある組み合わせのprimersを用いた時、予測された大きさのcDNAが増幅された。次に、新鮮ウナギ脳total RNAからmRNAを精製し、cDNAを合成して、cDNAライブラリー(λgtll)を作成した。増幅されたcDNAをprobeとしてウナギCT受容体遺伝子クローンを探索中である。
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