Clostridium perfringensが産生するθ毒素はコレステロールに特異的に結合する性質を持つ。この毒素を部分分解しビオチン化したBCθを用い、固定した細胞の細胞膜におけるコレステロール分布、および未固定の細胞で細胞膜のコレステロールを架橋した際の挙動について検索した。グルタルアルデヒド固定した培養細胞ではBCθは細胞膜全域に結合した。特に微絨毛や細胞間突起には高密度の結合が観察された。この結合はフィリピン、ジギトニンなどで阻害され、コレステロール特異的であることが確かめられた。無固定の細胞に氷温でBCθを作用させ、蛍光標識または金コロイド標識アビジン(またはストレプトアビジン)で可視化すると、細胞表面にほぼ一定の密度で結合し、局所的な集中は観察されなかった。BCθと標識アビジンを結合させた後に37℃、5〜30分浸漬すると、標識はカベオラあるいはカベオラ付近の細胞膜に集中し、少なくともその一部は取り込まれてエンドソームに到達した。 今回の実験によりBCθで標識される細胞膜コレステロール分子は、氷上で結合させた際には膜全域にほぼ均一に分布するが、二次試薬で架橋して37℃に加温するとカベオラに集中することが明らかになった。この分布変動のパターンは既に我々が観察したGPI結合型膜蛋白質、糖脂質、スフィンゴミエリンの場合と同じである。これらの分子は全て「カベオラ画分」に濃縮されることが報告されている。「カベオラ画分」に濃縮される膜脂質やGPI結合型蛋白質は共通の性質をもち、抗体などによる架橋や界面活性剤の処理の結果、カベオリンと共通の膜ドメインに集合するものと考えられる。
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