研究概要 |
RNA分子が細胞の形質転換の原因物質となる機構がある。核内小分子U5RNAはtransfectionにより染色体異常誘発をもって正常ラット細胞を形質転換する(Mol.Cell.Biol.9,4345-4356,1989)。更に、U5RNAのpolypurine tractを有するpartial sequenceの細胞内発現はmorphological transformationからtumorigenicityの獲得過程を進める(Mol.Carcinog.20,175-188,1997)。従って,initial eventに際し上記のようなtransforming RNAの生成が起これば癌化のinitiationが起こるはずである。放射線照射細胞に於いてtransforming RNAの形成の有無を検討中であるが,並行して癌化細胞から現実的にtransforming RNAが回収されるか否か検討を行った。HeLa細胞からcDNA libraryを作成しAlu DNA fragmentをprobeに用いてplaque hybridizationを行った。7個の陽性cloneを回収し塩基配列を決定したところ、これら総てnon-coding sequenceであることが判明した。発現plasmidを構築し細胞の形質転換能を調べた。1個のcloneにおいてその能力を認め、このcloneはU5-derived transforming RNAが有するpolypurine sequenceと同様なsequenceを保有していることも判明した。続いて放射線照射細胞においてtransforming RNAの同定を検討中である。
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