マウス線維芽細胞BALB/c-3T3を接触阻害がかかるように、コンフルエントになるまで培養し、約5x10^8個の細胞から、超遠心により、細胞膜画分をタンパク質として約1mg得た。それをオクチルグルコシドを用いて可溶化した。可溶化膜画分を透析し、リポソームを形成させてから、対数増殖期のBALB/c-3T3細胞培養液に添加すると、細胞増殖は促進される傾向を示した。これは、コンタクトインヒビションと一見、相反する現象であるが、膜在性の増殖因子の存在も知られているので、それら正の因子と負の因子の総体を観察したためと思われる。現在、可溶化膜画分を液体クロマトグラフィーで分画して、各々を透析しリポソームを形成し、接触阻害を惹起する増殖抑制活性のある画分を分離しようとしている。 また、別に接触阻害時に特異的に発現する、遺伝子のクローニングも試みており、PCRによるサブトラクション法により、リジルオキシダーゼ等10個のクローンを拾い、現在、その発現様式をNorthern blotting法により検討中である。さらに、接触阻害に関与するとされているp27をはじめとする一連のサイクリン依存性キナーゼインヒビッターの発現もNorthern blotting法により検討し、BALB/c-3T3細胞においては、従来の報告とは別に、接触阻害時に転写によるサイクリン依存性キナーゼインヒビッターの発現調節があることを見い出した。
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