研究概要 |
受精のシグナル伝達におけるRho蛋白質とチロシンリン酸化について解析し、以下の成果を得た。1.ユウレイボヤでは、受精の初期、精子添加後5分に、surface contractionと呼ばれる形態変化が観察される。卵内に前もってRho蛋白質を失活させるADPリボシルトランスフェラーゼC3を顕微注入すると、精子を添加しても上記の卵の形態変化は起こらず、また、受精も進行しないことが明らかになった。すなわち、Rho蛋白質が受精初期の機構に関与すると考えられる。2.受精初期の機構に関与するチロシンキナーゼを明らかにするために、ユウレイボヤ卵のsurface contractionに対する各種チロシンキナーゼインヒビターの阻害作用を調べた。その結果,erbstatin analogは阻害効果を示したが、その他のインヒビターはほとんど阻害しなかった。すなわち、erbstatin analog感受性チロシンキナーゼが受精初期の機構に関与することが明らかになった。3.ユウレイボヤの受精に伴う卵蛋白質のチロシンリン酸を、ホスホチロシンを認識するモノクローナル抗体PY20を用いたウェスタンブロット解析により調べた。その結果、surface contractionが起こる、精子添加後2〜5分の間に,分子量66kD、75kD、100kD、140kD、190kDの蛋白質がチロシンリン酸化され,その後,脱リン酸化されること、また、erbstatin analogが75kD蛋白質のチロシンリン酸化を阻害することが明らかになった。このチロシンリン酸化とRho蛋白質の関係を明らかにするために、チロシンリン酸化に対するADPリボシルトランスフェラーゼC3の効果を調べようとしたが、C3酵素を顕微注入できる卵の量の問題でまだ未解決である。
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