ドーパミンの非伝達物質機能をサル大脳皮質で調べる準備段階としてラットの大脳皮質で唯一ドーパミンを有する前頭前野で以下の実験を行った。ドーパミンD1とD2受容体拮抗薬を投与して前頭前野でシナップス密度変化を定量化した。その結果、前頭前野の部位によって異なるシナップス密度の変化を記録した。即ち前頭前野の部位によりドーパミンの異なるシナップス維持効果が推測された。前頭前野でのドーパミンの異なるシナップス維持効果がサルでも見られるかにかんして現在検討を行っている。また現在大脳皮質ニューロンの細胞体のモンタージュを作成し、胞体に接触するシナップスの特に抑制性と考えられる対称性シナップスの変化を検討中である。 ラット前頭前野でのモノアミンによるシナップス維持効果をドーパミンと比べるためにセロトニン、ノルアドレナアリンについても検討したが、結果は意外であった。セロトニンによるシナップスの形成維持効果は生後6週の体知覚領野では大きく、1週間セロトニンをなくすとシナップス密度は30-50%低下する。しかし前頭前野ではセロトニンの除去を行ってもスナップス密度に変化はない。即ち、前頭前野ではシナップスの維持にドーパミンがより大きく関わっていることが示唆された。ノルアドレナリンをなくすとシナップス密度が20数パーセント上昇するが、これはノルアドレナリンによるドーパミンへの抑制作用がなくなったためであると考えられる。今後はドーパミンによるシナップス形成維持効果の前頭前野における部位別の機構を更に詳細に検討したい。また電子顕微鏡に代わるシナップス密度の定量法をシナップス関連蛋白により検討したい。
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