本研究ではイオン・チャネル型の受容体がどの様に細胞骨格により修飾されるかという問題にパッチクランプ法でせまろうとする萌芽的研究を目指している。古典的には、細胞骨格を破壊するサイトカラシンやコルヒチンを細胞外から与えイオンチャネルを修飾したという報告がある。従って、イオン・チャネル型受容体もアクトミオシン系やチュブリン・ダイニン系の作用を受けると考えるのも理由がない訳ではない。 本研究ではPC-12細胞を用い、次のような実験を行う。i)パッチクランプをかけ、ATP-gated inward currentを測定する。ii)この内向電流にアクチン線維の安定性を変化させる薬物及びアクチン修飾蛋白質を作用させる。さらにiii)CXL・レトロウイルス・ベクターを利用し遺伝子導入を図り、ii)で作用のあった蛋白質の過剰発現又は発現阻止を行い、内向電流の変化をしらべる。本年度は以下の結果を得た。 1)PC-12細胞よりプリン受容体P2X_2の検出。本研究では種々の操作に耐えうる神経株細胞としてPC-12を利用する。この細胞にはプリン受容体が存在し、最近、イオンチャネル型P2X_2が同定・クローニングされた。これをパッチクランプ法で検出することができた。 2)細胞内に働いてアクチン線維を短くするサイトカラシン類及びこれを安定化させるファロイジン類を与えたが顕著な作用はみられなかった。 3)今度は細胞外から働く物質としてコラーゲンをRGDペプチドと共に与えると、ATPによる電流が増強された。 4)今後、コラーゲンなど細胞外マトリックスに注目して研究を進める方針ができた。
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