研究概要 |
私たちは、ラット脳海馬培養細胞を用い,グルタミン酸刺激に反応するMAPキナーゼ活性化反応を観察した。この反応には,PKC,細胞内Ca^<2+>濃度上昇の両方が関与していた。本研究では,PKC活性化反応,Ca^<2+>濃度上昇がどのような経路でMAPキナーゼを活性化するかを明らかにする目的で計画された。Levら(Nature 376,737,1995),Sasakiら(J.Biol.Chem.270,21206,1995)は新しく同定された。細胞質に存在するチロシンキナーゼ(Pyk2/CAKβ)がPKC,Ca^<2+>の効果を仲介している可能性示唆した。すなわち,グルタミン酸の細胞刺激によって活性化されたPKCおよび上昇したCa^<2+>がPyk2/CAKβを活性化し,Ras活性化反応を介してMAPキナーゼが活性化されると考えた。幸い,佐々木輝捷教授(札幌医大・癌研・生化学)との共同研究により,予想よりもはるかに仕事を進展されることができた。 a)Pyk2/CAKβに対する特異的な抗体を用い,ラットと脳海馬初代培養細胞,PC12細胞のPyk2/CAKβの存在は,イムノブロット法を用いて検索し,確認された。 b)組換え遺伝子実験法によって得られた全長の組換えGST-CAKβは,CaMキナーゼIIによって燐酸化され,PKCの基質にはならなかった。 c)燐酸化CAKβは,活性上昇を示さなかった。 d)脳海馬初代培養細胞をあらかじめ[^<32>P]燐酸でラベルしておき,グルタミン酸で刺激した。反応終了後,Pyk2/CAKβを免疫沈殿させ,燐酸化反応を調べた。Pyk2/CAKβ燐酸化反応が有意に上昇していた。 e)同細胞を用い,グルタミン酸刺激後免疫沈殿した。沈殿物のチロシンキナーゼ活性をポリ(glu,tyr)を用いて測定した。対照に比較し,有意に活性の上昇が測定された。現在,in vitroと細胞系での結果を解析し,MAPキナーゼ活性化反応におけるCaMキナーゼII燐酸化反応とPyk2/CAKβ活性化反応の連関について検索している。
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