本年度は、極微弱生化学発光測定系に改良を加え、前年度に確立した視交叉上核のorganotypic slice cultureによる長期静置培養系を用いて極微弱生化学発光の概日変動の検出を試みた。 測定系の改良は以下のとおりである。まず、slice培養用のCO_2-incubatorを暗箱としても用いることにより、遮光性を高めた。また、より広い範囲のsliceからの発光を検出するために、これまで用いてきたテ-パファイバーに代えて、入射端にGRIN(Graded Refractive INdex)マイクロレンズを装着した光ファイバーを用いた。入射端レンズ径は2mm、出射端ファイバー径は100μmである。さらに、光ファイバーのslice上への設置位置を正確に決めるために、小出力可視半導体レーザー光を逆向きにファイバに導入してsliceを照射するにより位置を決定することのできる照準系を構築した。他の部分については以前発表したシステムと同じである。 この系を用いて、SCN sliceからの極微弱生化学発光強度が主観的明期に高く、主観的暗期に低いというパターンの概日変動を示す結果を得た。また、同じsliceを用いて引き続き3時間毎のvasopressin放出量を測定したところ、発光とvasopressin放出量はほぼ同じ位相の概日変動パターンを示すことがわかった。我々は以前に極微弱生化学発光強度が神経活動と相関していることを示しており、今回の結果はそれに沿うものでもある。
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