1.Primer/Linkerハイブリッド切断(PLHD)法を新たに開発し、純系度の高いDBA/2マウスで雄雌の遺伝子サブトラクションを行い、雄特異的遺伝子ライブラリーを作製した。 先ず、雄ゲノムDNAをEco RI、雌ゲノムDNAをMboIで夫々断片化した後、Eco RI断片の両端にEco RI-Primer/Linkerを連結させ、雄の増幅Eco RIライブラリーを作製した。これに、10^3〜10^4過剰量の雌Mob I断片を加えてハイブリダイゼーション反応を行った。6種の4塩基認識酵素でハイブリッドを切断後、Eco RI-PrimerでPCR増幅させて雄特異的遺伝子ライブラリーを作製した。雄特異的遺伝子であるmSRY遺伝子及び雌雄共通に存在する遺伝子であるβ-actin遺伝子によってPLHD法の各ステップを解析した結果、最終ライブラリーには雄特異的遺伝子が高純度に濃縮していることが判明した。 2.マウス精子形成過程における遺伝子差異を蛍光ディファレンシャル・ディスプレー(FDD)法で解析し、半数体特異的な新しいタイプの基本転写因子(TFIIA-τ)をクローニングした。 雄のBALB/cマウスの精巣からエルトリエーターとセルソーターとを用いて高純度の精細胞を単離し、mRNAを調製した。成熟及び未成熟(17日齢)マウス精巣からも同様にしてmRNAを調製した。40種類の任意primerを用いるFDD法による比較から、精細胞で半数体特異的に発現する約500種類のcDNA断片を同定した。そのうち含有量の高い7種のcDNA断片をクローニングしたところ、4種が既知の遺伝子と高い相同性を示したので、5′-RACE法によって基本転写因子TFIIAと相同性の高いcDNA(TFIIA-τと命名)の全塩基配列を決定した。この遺伝子は、精巣で半数体特異的に発現し、他の組織では全く発現が見られなかった。また、発現量は高く、従来知られているTFIIAのそれより約2桁も高かった。興味あることに精巣では、TBP、TFIIBなど他の基本転写因子も同様に高く発現していることが判明し、精巣特異的な転写調節機構の存在が強く示唆された。精子形成には、TFIIA-τが転写調節の主役を演じている可能性が高い。
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