研究概要 |
本年度は、まず、1)交流磁場による流体の駆動を試み、その結果から、人工心臓の駆動に必要な性能の算出を試み、また、2)強磁場が生体に与える影響の検討を行った。 1)に関しては、いわゆるアラゴ-の円板を模し、永久磁石(Nd-Fe-B製,直系2cm,表面磁束密度1200Gauss)を6対、対向して配置し、これをモーターを用いて回転させると云う方法によって交流磁場を発生させ、この間に挟み込んだ導管中の電解質流体(食塩水)などの実際の駆動を試みている。単位体積あたりの模擬血液流体に働く推力fは、f=σ・B^2・v(σ:模擬血液の導電率、B:模擬血液にかかる平均磁束密度、v:磁場の移動速度)で与えられるが、食塩水では、電解質溶液の電気抵抗が0.1〜0.3Ω・mと大きく(銅では1.7x10^<-8>Ω・m)、磁場もあまり強くない事、また、ダクトの断面積が小さい事もあり、まだ、期待した推力(推進効率)を得るに至っておらず、現在、模擬血液として、導電率の高いHCI溶液などの使用や、さらに強磁場の発生が可能な超伝導磁石を使用したシステムの作成を検討中である。 2)に関しては、本年度は主に静磁場中で生体が受ける影響の検討を行った。静(強)磁場中においても、血流が流れると、フレミングの法則により誘導電流が生じ、静止した血液に変動強磁場を加えるのと同様の状況が生じるが、実際に動物を強磁場中に置いても、ほとんど生体には影響が生じないので、交流磁場により血液を駆動した際にも、血液-生体系には余り影響が及ばない可能性が示唆された。
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