生体内で血管拡張(血圧調整)、神経における興奮伝達も脱興奮や、小脳における長期抑制(記憶)など多様な機能を有する一酸化窒素(NO)は、上述した多くの生体機能の解析あるいは診断パラメーターとなり得る。しかし、水溶液中における半減期が短いNOはその測定が困難であり、現在までに報告されたNO測定法では、機能解析・診断に最も有効な in situ 測定を行なうことは不可能であった。そこで、in situNOセンシングを行なう為のNO認識物質の検索を行なった結果、熱変性したシトクロムCと、NOに特異性の高いラジカルスカベンジャーとのふたつの物質がNOを基質とする還元あるいは酸化反応を触媒し、かつその酸化還元反応を電極反応と組み合わせてNOの電気化学的測定が可能であることを見出した。 熱変性シトクロムCの場合には、熱変性することによってNO還元活性が付与され、NO還元反応に伴い酸化されるヘム鉄(III)を電気化学的にFe(II)に還元できることが明らかになった。この反応で得られる還元電流はNO量に比例することから、NOセンサとして応用を行なったところ、0.5〜4μMの範囲で水溶液中のNOの測定が行なえたことが明らかとなった。 NOに特異性の高いラジカルスカベンジャーの場合は、NO酸化反応を触媒する。NO酸化に伴い還元されたラジカルスカベンジャーは電気化学的に酸化できることから、ここで測定される酸化電流を測定することにより0.05〜100μMの範囲で水溶液中のNO濃度のセンシングを行なうことができた。
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