本研究は、インテリジェント・ドアロックを用いた徘徊性痴呆老人安全介護システムの基礎研究として、痴呆自動診断システムの試作モデルを作製し、その評価実験を行った。評価に採用する質問には、痴呆の評価に用いられている改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の中から、合計得点と最も相関が高く、ディスプレイに提示可能で質問項目が増やすことができる「5つの物品記銘」問題(5つの物品を被験者に提示し記憶してもらい、物品を隠した後に何があったか答えてもらう問題で短期記憶の能力を評価している)が最適であるという結論を得た。提示する物品数を5〜9個とし、最適と思われる提示物品数、提示時間、返答時間を検討した結果、提示物品を7個、提示時間を60秒、返答時間を65秒とするのが最適であるという結果を得た。これらの結果をもとに試作モデルを作製した。試作モデルはタッチパネル付ディスプレイとコンピュータからなり、HyperTalkによりプログラミングされた。ディスプレイにはまず7つの物品が提示され、被験者はこれを記憶する。60秒経つと画面は返答用画面になり、先に提示された7個の物品含む20個の物品が提示される。被験者はタッチパネル付ディスプレイに触れることにより、記憶した物品を選択する。痴呆老人6人を含む15人お被験者による評価実験では、HDS-Rの結果との間に0.734という高い相関を得た。今後はこの試作システムをインテリジェント・ドアロックシステムに応用し、より正確な評価が可能になるような諸条件の検討が課題となる。
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