飛行原理についてはダヴィンチなどの先人や近年の航空流体力学などの最新の研究などにおいてすでに解明済みと考えられているが、昆虫などの微小生物の飛行原理(厳密には飛翔筋の駆動機構)の解明はほとんどなされていない。したがって、その解明は工学・医学などはもとより、広く人間活動に影響を与えるものとなると考えられる。 本研究においては、間接飛翔筋を用いて飛ぶ昆虫についてバイオメカニズム的解明をすることを目的とした。具体的には一般には寸法(スケール)の制約があり、昆虫の寸法(スケール)を(上方にも下方にも)越えることできないといわれているが、弾性定数等を適当に取ればこの限界を越えられるのではないかという仮定を検証することを目的とした。具体的成果は以下の通りである。 1.昆虫胸部のバイオメカニズムモデルを確立した。 2.そのデータを用いてシミュレーション用モデルを構築し、さまざまな条件を与えてミュレーションを繰り返し、間接飛翔筋型の昆虫が、一定の周波数で羽ばたく理由、そのメカニズム、スケールの限界などを明らかにした。 3.また、そのシミュレーションモデルのパラメータから、人工的に再構成可能な機械的パラメータを求め、天然ゴムおよびある種のプラスティックであることを明らかとした。 4.ハチを用い、胸部の弾性定数を自作のレーザー変位計を用いて測定を行なったが、理論値とはかなりかけ離れた数値しか得られなかった。この原因は、試料の変性等の原因が考えられたが、研究年度内では解明できなかった。 5.ハチの連続組織切片から胸部飛翔構造部の3次元再構成を試みた。
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