研究概要 |
人工股関節の骨頭臼蓋間の荷重伝達における衝撃吸収性能を調査するために以下のとおり研究を進めた. 弾性流体潤滑理論に基づき有限要素法と差分法を統合したコンピュータ・プログラムにおいて骨頭・臼蓋間の相対変位と関節液に発生する圧力の関係を定式化する過程で用いた骨頭,臼蓋間の相対変位と関節液流量の関係式を弾性変形を考慮したすき間の相対変位を用いて修正したが,歩行中の負荷過程最大荷重載荷時まで計算することができた.その結果,基礎式の修正に伴い最小関節液膜厚さと関節液に生じる圧力双方とも増加し改善されることを確認した.また,実験に関しては,試作した落錘式の衝撃試験機により骨頭直径,臼蓋材質,関節液の有無についての差違を調査するための実験をおこなった.骨頭側の衝撃荷重と臼蓋側の伝達荷重を測定し,双方の最大荷重で比較した.その結果,昨年の実験により骨頭直径が大きくなることにより伝達時の緩和効果が窺えたが今回の実験結果から差違は確認できなかった.臼蓋材質についてはポリエチレンに比べて鋼を用いたとき,衝撃荷重が63%も増加したのに対して,伝達荷重は12%の増加に留まった.関節液の有無については条件に関わらず衝撃荷重に与える影響は少ないが,ポリエチレン臼蓋の場合に伝達荷重が若干(約9ポイント)緩和する結果を得た.
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