研究課題/領域番号 |
08878178
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研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
矢野 良治 理化学研究所, 細胞内情報研究チーム, チームリーダー (30210313)
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研究分担者 |
尾崎 美和子 理化学研究所, 細胞内情報研究チーム, フロンティア研究員 (30291058)
松澤 美恵子 理化学研究所, エキゾチック・ナノ材料研究チーム, 基礎特別研究員 (00291089)
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キーワード | 神経細胞初代培養 / 基板表面加工 / 神経栄養因子 / ミッドカイン / ラミニン / 小脳顆粒細胞 |
研究概要 |
本年度においては、培養基板表面加工技術の開発とそれを用いた生理活性物質のアッセイを行った。松澤は、これまで使用していた基板表面の加工技術の改良とそれを用いた培養細胞のモニタリングシステムの開発を行い、顕微鏡下での神経細胞の培養とコンピューターと連動させたビデオモニタリングシステムを組み合わせ、加工した基板表面上で培養した細胞の生育と神経突起の伸張過程を、経時的に観察する系を確立した。 このシステムを用いた生理活性物質のアッセイのモデルケースとして、これまで名古屋大学の村松らによって研究が進められてきたヘパリン結合性成長因子ミッドカイン(MK)の神経栄養因子活性を調べた。これまでの研究において、神経細胞を培養する基板表面にMKを直接塗布することにより、細胞の生存率を3-5倍、神経突起の伸張を2倍程度増加させる活性を持つことが示されてきたが、この活性は細胞外接着因子としての機能と栄養因子としての機能の双方を含んだものを観察しているものと考えられる。我々は、今回開発した生化学的に制御された培養系を用いて、MKの持つ栄養因子活性を、接着因子活性より分離して定量する事を試みた。ラット胎児より分離した小脳の顆粒細胞を、ガラス表面をアミノシランで処理した基板表面上で、個々の細胞が独立した状態で培養した。生存率に対する効果を調べたところ、2.5ng/mlの濃度による添加によって1.3培ほどの上昇が観察された。逆に、添加濃度の増加により(5-20ng/ml)、顕著な生存率の低下が観察された。この低下は、培養基板表面にラミニンペプチドを結合させ細胞接着の特異性を増加させた場合に抑制されることから、MKが細胞表面に結合することによって、細胞の基板表面に対する接着を阻害したことによるものと考えられる。今後、さらに神経突起伸張に対する効果や、生体内における生理的な意味に関して解析を進めていく予定である。
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