• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

1998 年度 実績報告書

細胞骨格の分子細胞生物学及び分子遺伝学的研究;細胞内物質輸送、情報伝達及び細胞の形作りの機序

研究課題

研究課題/領域番号 08CE2007
研究機関東京大学

研究代表者

廣川 信隆  東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (20010085)

研究分担者 岡田 康志  東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (50272430)
田中 庸介  東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (90302661)
原田 彰宏  東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (40251441)
金井 克光  東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (80214427)
中田 隆夫  東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (50218004)
キーワードキネシンスーパーファミリー蛋白、KIFC_S / 細胞内物質輸送 / 微小管 / ジーンターゲティング / KIFIA / 脳ダイニン / KIFC2
研究概要

1. GFP(Green Fluorescent Protein)標識膜蛋白を、初代培養神経細胞にアデノウイルスにより発現させ、様々な膜蛋白がどのような膜小器官に組み込まれ軸索内を輸送されるかを初めて可視化することに成功した。形質膜に含まれるGAP43、シナプス小胞膜蛋白Synaptophysin、シナプス小胞のドッキングに重要な役割をはたす形質膜蛋白SNAP25、ゴルジ装置由来のTGN38等がtubulovesicularな膜小器官として順行性あるいは両方向性に輸送される事が明らかになった。
2. Kinesin Superfamiliy Proteins(KIFs)のうち、KIFlA,KIF5B及びKIF3Bのgene targetingを行った。
1) KIFlA欠失マウスの解析
KIFlA欠失マウスを作製、解析した。
KIFlA欠失マウスは生後24時間以内に運動障害と知覚障害を呈して死亡した。脊髄前角を電顕で観察すると、シナプス終末の密度及びシナプス終末内の小胞の密度の著名な減少がみとめられ細胞体に小胞の異常な集積がみとめられた。また中枢神経系の各所で神経細胞死、及び軸索の二次変性がみとめられた。神経細胞死の過程の詳細を観察するため海馬神経細胞を培養すると、野生型では密なシナプス結合を形成するのに対して、KIFlA欠失マウスの神経細胞は培養6〜8日目ぐらいから死に始め、13日目では大部分が死んでしまうこと、及びこの細胞死は野生型神経細胞との共培養で救済することが出来ることが分かった。以上の結果から、KIFlAがシナプス小胞の前駆体を運び神経細胞の機能と生存にとって必須の役割を果たしていることが明らかとなった。
2) KIF5B欠失マウスの解析
KIF5B(conventional kinesin)欠失マウスを作製、解析した。KIF5B欠失マウスは胎児の内に死亡した。胎児の生存中に解析したところ、発達が著しく遅れ、、発生学的に興味深い多様なphenotypeがみられたが、胎児由来の胎児外膜の細胞を培養して、細胞内の種々の膜器官の動態を解析した。その結果、ライソゾーム及びミトコンドリアの細胞中心部から周辺部への輸送に障害があることが分かり、KIF5Bがライソゾーム及びミトコンドリアの微小管プラス端方向(細胞中心部より周辺部)への輸送を行っていることが明らかになった。ERとゴ … もっと見る ルジ間の輸送には影響がみられなかった。
3) KIF3B欠失マウスの解析
KIF3B欠失マウスを作製、解析した。
KIF3B欠失マウスも胎児の内に死亡した。胎児の生存中に解析したところ、KIF5B欠失マウス同様発達が著しく遅れ、また発生学上多彩なphenotypeを呈した。中でも興味深いのは体の左右軸決定の乱れで左右決定の最初のサインである心臓のループ形成がDループ(正常)とLループ(逆位)が半々であった。これとkif3B-/-の関係を調べるため左右決定に重要である遺伝子カスケード(Lefty2等)の発現を調べた。本来左側に発現するLefty2が両側に発現されるかあるいは全く発現されない事が分かりKIF3BがLefty2等より上流の現象に関わっていることが明らかになった。そこで左右軸決定に重要な役割をもつNodeを解析したところ、野生型では1本の線毛をもつが、kif3B-/-ではこの線毛が形成されないことが分かった。KIF3Bの局在をNodeの上皮細胞で解析するとKIF3Bが線毛内に局在していることが分かった。つまりKIF3Bが線毛を形成する蛋白複合体を輸送していることが示唆された。野生型のMonociliumは9+0の微小管より構成されており動かないと考えられていたが、これを胎児が生きたままビデオ顕微鏡で観察すると反時計法方向に回転しておりその回転運動によってNode領域の胎児外液の右から左への流れが形成されていることが分かった。したがってKIF3BはNode上皮細胞の線毛の材料となる蛋白複合体を輸送し、線毛を形成しその線毛が反時計方向の回転運動をすることによりNode流を作り分泌性のMorphogenの左側への濃度勾配を作りLefty1,2,nodal等の遺伝子カスケードのスイッチをONにするという機構が考えられる。
3. Cytoplasmic Dynein欠失マウスの作製と解析
Cytoplasmic Dyneinは微小管のマイナス端へ向かって動くモーター分子であるがそのin vivoでの機能は明かでなかった。これを解明するためcytoplasmic dynien遺伝子欠失マウスを作製、解析した。CD欠失マウスは胎児初期に死亡した。そこでBlastcystを培養した。CD-/-ではBlastcystの細胞の増殖が落ちたが培養初期の細胞の膜小器官の動態を解析した。その結果エンドゾーム、ライソゾーム系の細胞周辺から細胞中心部への輸送が障害され、cytoplasmic dyneinがこれらの輸送に重要な役割を果たしていることが明らかになった。 隠す

  • 研究成果

    (13件)

すべて その他

すべて 文献書誌 (13件)

  • [文献書誌] Nagata,k.et al.: "The MAP kinase kinase kinase MLK2 co-localizes with activated JNK along microtubules and associates with kinesin superfamily motor KIF3" The EMBO Journal,. 17. 149-158 (1998)

  • [文献書誌] Hirokawa,N.: "Kinesin and dynein superfamily proteins and the mechanism of organelle transport" Science,. 279. 519-526 (1998)

  • [文献書誌] Nakata,T.,S.Terada,andN.Hirokawa: "Visualization of the dynamics of synatic vesicle and plasma membrane proteins in living axons." Journal of Cell Biology,. 140. 659-674 (1998)

  • [文献書誌] Hirokawa,N.,Y.Noda,and Y.Okada.: "Kinesin and dynein superfamily proteins in organelle transport and cell division." Current Opinion in Cell Biology.10. 60-73 (1998)

  • [文献書誌] Kim,W.et al.: "Binding of murine leukemia virus Gag polyproteins to KIF4,a microtubule-based motor protein." Journal of Virology,. 72. 6898-6901 (1998)

  • [文献書誌] Hirokawa,N.,and S.Takeda.: "Gene targeting studies begin to reveal the function of neurofilament proteins.(mini-review)" Journal of Cell Biology. 143. 1-4 (1998)

  • [文献書誌] Santama,N.et al.: "KIF2β,a new kinesin superfamily protein in non-neuronal cells,is associated with lysosomes and may be implicated in their centrifugal translocation." The EMBO Jouranl,. 17. 5855-5867 (1998)

  • [文献書誌] Nonaka,S.et al.: "Randamization of left-right as ymmetry due to loss of nodal cilia generating leftward flow of extraembryonic fluid in mice lacking KIF3B motor protein" Cell,. 95. 829-837 (1998)

  • [文献書誌] Harada,A.,Takei,Y.Kanai,Y.Tanaka,S.Nonaka,and N.Hirokawa.: "Golgi vesiculation and lysosome dispersion in cells lacking cytoplasmic dynein." Journal of Cell Biology,. 141. 51-59 (1998)

  • [文献書誌] Yonekawa,Y.et al.: "Defect in synaptic vesicle precursor transport and neuronal cell death in KIF1A motor protein-deficient mice." Journal of Cell Biology. 141. 431-441 (1998)

  • [文献書誌] Tanaka,Y.et al.: "Targeted disruption of mouse conventional kinesin heavy chain,kIF5B,results in abnormal perinuclear clustering of mitochondria." Cell. 93. 1147-1158 (1998)

  • [文献書誌] Okada,Y.and N.Hirokawa.: "A proccssive single-headed motor:kinesin superfamily protein,KIF1A." Science,. 283. 1152-1157 (1999)

  • [文献書誌] Hirokawa,N.: "Dynamic Cells:Cell Biology of the 21st Century" Elsevier Science,169 (1998)

URL: 

公開日: 1999-12-13   更新日: 2016-04-21  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi